仕事と仕事の間の時間がどうしても空いてしまい、ちょうど上映していたので、見てきました。『エイリアン・ロムルス』を・・・!!
本作がお勧めなのは「エイリアン1-4」が好きな人です。本作では「コヴェナント」や「プロメテウス」のように、エイリアン誕生の秘話や、上位存在は出てくるということはありません。エイリアンと遭遇し、そして生存を図るという話です。物語に集中するというよりは、現代の技術で作られた怖くてかっこいいエイリアンが大暴れするのを楽しむ作品となっています。
それでは詳細に感想を書いていきましょう。最初はネタバレなしで感想を書きます。
『エイリアン・ロムルス』の時系列
公式HPによると本作はエイリアン1と2の間とのことです。エイリアンシリーズを見たのはかなり昔で、ほとんど内容を覚えていないのですが、それでも楽しめたので時系列は良く分かってなくても大丈夫だと思います。
エイリアンシリーズを一つも見ていなくても大丈夫です!
過去作のオマージュが多いので、見てた方がより楽しめるのは間違いないです。
あらすじ
厚い雲に覆われ、日の光が差さないジャクソン星で、主人公レインは旧型のアンドロイドのアンディと採掘の仕事をしています。アンディはレインの父親が見つけてきたアンドロイドで、ソフトウェアに問題があり運動能力が低く、言葉もスムーズに出てきません。それでも、レインの役に立つために献身的に働きます。レインとアンディは長期間の労働により、ユタニ社との契約を完遂し、日の光が差す平和な星ユヴァーガへの移住を希望しますが、ユタニ社は労働期間を不正に延長します。失意の中、レインの友人のタイラーから、ジャクソン星からの脱出計画を持ちかけられます。ジャクソン星の近くを漂流している宇宙船に乗り込み、休眠ポッドを使いユヴァーガへ渡るという計画でした。
このままではユタニ社の言いなりで一生を終えることが明白です。うまくいくとは限りませんが、レインはタイラーの案に乗ることにします。主人公レイン、アンドロイドのアンディ、企画者のタイラーと、タイラーの妹ケイ、従弟のビヨン、ビヨンの恋人のナヴァロの6人で、漂流している宇宙船「ロムルス」へと乗り込みます。
「ロムルス」には目論見通り、休眠ポッドがありましたが、燃料が足りませんでした。ロムルスの中を探索し、低温保管庫に辿り着きます。保管庫では低温を維持するのに、休眠ポッドで使用しているのと同じ冷凍燃料が使われていました。ポッドで使用するために冷凍燃料を抜くと、保管庫の温度が上がっていきます。すると、低温のため休眠していたフェイスハガーが活動を再開し、主人公達に襲いかかります・・・。
ネタバレなし感想
ネタバレなしで感想を書きます。
まず、本作のエイリアンのディティールですが、さすがに最新の作品だけあってとてもきれいです。滑らかに動きます。フェイスハガーの動きや、寄生シーンも良く出来ていました。その反面で、人間(あるいは獲物)への残虐性というか、執着心みたいなものはあまり感じ取れませんでした。エイリアンは繁殖のために人間を捕まえて苗床にするのですが、過去作では繁殖のためだけだけでなく人間という種に対しての「敵意」や「悪意」のようなものを感じます。これはエイリアンが肉体的に優れた捕食者というだけでなく、高い知能と感情を持つ生物であるということを示しています。本作ではエイリアンから走って逃げられたり、柵を超えるだけですぐ諦めたりと、エイリアン側の殺意がちょっと弱く、また知能が高い描写も少なかったように感じました。また、宇宙空間という閉鎖空間でエイリアンに襲われるというシチュエーションが、エイリアンへの恐怖感を増長していると思うのですが、本作では舞台となる宇宙ステーション「ロムルス」がやけに広く、あまり閉鎖空間にいる感じはしませんでした。
閉塞感でいうと物足りないところもあるのですが、宇宙の描写自体は見事でした。ジャクソン星から脱出するときの大気圏の抵抗と、宇宙空間に出た後の星の美しさは圧巻です。また、無重力のふわふわした感じも上手に表現されていました。序盤に無重力シーンがあるのですが、時間でいえば10秒程度だと思うのですが、体が浮くような、酔うような感じがしたので、酔いやすい方は注意かもしれません。
ストーリーはいわば王道です。予想外の展開はあまりないですが、逆に伏線をしっかり回収しており、きれいにまとまった良作だと思います。冒頭でも書きましたが「コヴェナント」「プロメテウス」のように、エイリアンの出自や、上位存在は出てきません。ストーリーの要素を絞ることで『エイリアンとの命がけの追いかけっこ』というテーマに良く集中できました。
エイリアンシリーズ定番のアンドロイドとの関係についてですが、本作ではレインの友人「アンディ」の他に、もう1体現地のアンドロイドが出てきます。これらのアンドロイドと人間との考え方の違いや、すれ違いからくるヒューマンドラマがくどくなく、それでいて有効に舞台を盛り上げていて良かったです。
総評としては、せっかくなら映画館で見たい映画です。エイリアンシリーズが好きな人は楽しめると思います。
ネタバレあり感想
それでは続いてネタバレありで行きます。
本作で一番怖いところ
フェイスハガーの群れの中を抜けるところではないでしょうか。目がない→温度と音で物体を認識しているので、部屋の温度を室温と同じにして音を立てなければ大丈夫、というのはなるほどと思いました。途中、ジャンプスケアがありますが、あそこが一番びっくりしました。温度と音で認識している割には正確に口を狙ってくるのは何ででしょうね?
フェイスハガーの群れのところに限らず、本作は静と動の使い分けが上手だったように思います。例えば、孵化したばかりのエイリアンからケイが隠れるところ。頭上の足場に着地して周囲を探すのを、息を殺して耐えるところなんか一緒にどきどきしちゃいました。中盤まで登場するエイリアンはこの1体だけなのですが、沢山いてどこから来るか分からないより、ある程度場所が分かっているエイリアンが迫ってくる方が緊迫感があって良かったです。あえて個体数を絞ることで、おいかけっこ感を演出しているのだと思います。一方で、中盤に武器を手に入れてからのエイリアン大量発生と、エイリアンの雑魚化が残念でした。特に走って逃げられるくらいの足の遅さであることと、知能が高い描写が無かったのがいまいちだったかと思います。個体数を絞って、1体1体をより強くしても良かったのかなと思うのですが、そうすると後半の見せ場であるエイリアンの体液の酸の中を抜けていくシーンが無くなってしまうので微妙でしょうか?
アンドロイド関係
本作では2体のアンドロイドが出てきます。アンディとルークです。
まずアンディですが、珍しく最後まで味方のアンドロイドでしたね。エイリアンシリーズのアンドロイドは大義のために少数を犠牲にしても良いという考え方なので、主人公と対立することが多いです。ソフトをアップデートした後に流暢にしゃべり始めるシーンは見た目は同じなのに中身が違う、ということが伝わってきて怖かったですね。ケイを見捨てるところは、アンドロイドと人間の考え方の違いということで象徴的なシーンなのですが、人間と協力していく立場である以上、助けたかったけど状況的に難しかった、ということを説明するべきだと思いました。
ルークはエイリアンシリーズ特有の倫理観ぶっとびアンドロイド枠ですね。研究のためにレイン達を見殺しにするわ、オートパイロットを勝手に操作するわでやりたい放題でしたね。どんな理由があろうと、研究のために目の前の人を犠牲にしてはいけません。倫理観のレベルがナチス時代からアップデートされていません。彼自身はそうするようプログラムされているだけなのですが、その冷淡ぷりがさすがアンドロイドですね。感情や動揺することがないというのは極限環境における強みでしょう。個人的には、エイリアン以上に作中のヘイトを一身に集めていて、少し哀れでした。
『黒い液体』と最後のアイツ
『黒い液体』はどんな環境にも適応する、人間という種族をアップデートするためのもの、とのこと。材料はエイリアンの体液だそう。打ち込まれた死にかけのマウスが、みるみる回復していきますが、更に時間が経つと体が膨れ上がり、体内からエイリアンのような何かが皮膚を突き破ります。
視聴者はこの『何か』が皮膚を突き破るシーンを見ているので、黒い液体が上手くいかないことは分かるのですが、ルーク含むロムルスの船員の人はどこまで知っていたのでしょうか?変異することを知った上で、生物として強くなるからokと考えていたのか、そもそも知らなかったのか。個人的には知っていたけどokと考えていた、が正解のような気がします。実験室ではマウス以外にもエイリアン+ウニ、カニみたいなのとか、エイリアンとのキメラ生物が様々いたので、黒い液体を使った後のことは分かっていたはずです。『人』が『人』でなくなっても、強くなるならアンドロイド的にはそれは進化扱いなということでしょう。
この進化とは何か、黒い液体を打つかというのは難しい問題で、視聴者としては化け物に変異することを知っているので、黒い液体を使いたいとは思わないでしょうが、変異しないのであればどうでしょうか。人の体のままで、驚異的な再生能力と様々な環境への適応能力を獲得できるとしたら、打つでしょうか?ドラえもんの『適応灯』みたいなものだと考えると、打ってもいいような気がしますよね。現実世界でいうならワクチン接種なんかも、見た目はそのままに感染に強くなります。性格が変わるのが嫌という人もいるかもしれませんが、うつや不安神経症の薬なんかは性格が変わるものもあります。見た目が変わらないのだとしたら、黒い液体を打つ人がいるかもしれませんね。
最後のアイツ、ケイの赤ちゃんの変異体ですが、彼は結局何がしたかったのでしょうか?エイリアンと赤ちゃんの融合体なので、ここでは『融合体』と呼びます。融合体は生まれてすぐに目の前にいるレインを無視して母親であるケイのところに向かったので、母親への愛があるとか、母乳を飲みにいくとかかと思って勝手に戦慄していたのですが、普通にケイを殺して、食べてましたね。ちょっとここはなんか残念でした。もっと高次元の存在として、高い知能であったり、何かの意志を見せて欲しかったですね。
「コヴェナント」「プロメテウス」に似たような人(?)が出てきていましたが、エイリアンと人間の融合体というコンセプトだと似てしまうのでしょうね。向こうは創造主で、本作は黒い液体で生まれた人間とエイリアンの融合体なので出自が全然違います。
本作ではラスボスポジが融合体なのですが、エイリアンシリーズ恒例のクイーンを想像していた人からすると少し肩透かしだったのではないでしょうか。クイーンはまず体が大きくて、膂力もあり、しかも産卵出来るので、クイーンさえ生き残ればまた数を増やせるということでシリーズ屈指の強キャラです。対して融合体はデザインこそ秀逸ですが、動きが緩慢で、爪や牙などの武装もエイリアンより強そうには見えませんでした。(動きが緩慢なのは冷凍燃料が漏れたからですが。)
ちなみにこの冷凍燃料が漏れるくだりは、融合体の動きを遅くして、狭い船内でのチェイスを可能としているだけでなく、自然な流れで主人公が宇宙服を着る理由を作っており、その後の展開につなげているところが見事だと思いました。
次回作への伏線
あまり明確な伏線はありませんでしたが、強いて挙げるなら①黒い液体を打ったケイの体②黒い液体の残り③孵化したエイリアンの殻、がありそうかと思います。
①ケイは融合体に殺されるのですが、黒い液体はぼろぼろのマウスを回復させる程ですから、首を噛まれたくらいであれば回復出来るかもしれません。もし生きているとすれば、時間が経てばマウスと同様に人間を超越しな何かに変異するはずです。②黒い液体は6本?ほどあったのですが、作中で使用されたのは1本だけです。③ナヴァロから孵ったエイリアンの殻が船内にあるはずなので、そこから何かというのはあるかもしれません。
本作はかなり評価が高いようなので、もしかしたら続編が作られるかもしれませんね。
終わりに
エイリアン自体とは関係ないのですが、音がうるさすぎました。IMAXで見てきたからでしょうか?産業医講習で貰った耳栓がバッグに入ったままだったので、開始10分くらいで着けました。耳栓つけてもまだ少しうるさいくらいだったのですが、せっかくIMAXで見てるのだから、普通に見たかったです。以前、ジュラシックワールド3をIMAXで見た時も音がうるさかった記憶があるので、IMAXは音量大き目なんでしょうか?映画自体はとても面白かったので、興味がありましたら是非足を運んでみてください。
※サムネイル画像はCanvaAIで作成しました。
コメント